PLMに関して,多くの皆さんがそれぞれの見識を持たれ議論が飛び変わっている。また、Googleなど検索エンジンでひもとけば、多くのPLMソリューションベンダーを中心とした情報を得ることが出来る。そこには各社の特徴とも言うべき独自のメッセージも見ることが出来る。
一般論として、製品ライフサイクルマネージメント(PLM:Product Lifecycle Management)はモノづくり(*.1)企業のための新しいパラダイムである。その名が表すように、『製品』の生涯:ライフサイクル、 つまり初期のアイデアから、企画/設計/製造、利用&使用、そして廃棄・再利用に至る間の製品のマネージメントを行えるようにするものである。
PLMは、製品のマネージメント、すなわち品質・コスト・デリバリー(所謂、QCD。最近では環境も課題の範疇にし、QCDEとされる場合もある)をコントロールするために重要である。企業が、もしライフサイクルのどこかで、これらのコントロールを成し得なくなったらば、例えば、市場に出すタイミングを誤ったり、目標原価を超えるなどをしたならば、結果的に顧客や市場での評価を低下させ、ひいては当該企業の『商いの品質』を著しく落すことになりかねない。
さらに昨今のビジネス環境では、QCDの追求は不可欠であるものの、それだけでは競争優位には不十分であり、新たな要因、 所謂『製品&プロセス・イノベーション』が叫ばれている( 図1:新しいゲーム:QCDの均質化だけではもはや不十分)この背景には以下のようなビジネスモデルの変化が起きている:
- マスプロダクションからマスカスタミゼーション
- タイムツーマーケットからタイムツーバリュー
- コストコントロールから収益性
- リアクションからアジリティ
- モノテクノロジーからマルチテクノロジー
- 製品の品質から企業そのもの品質
- 国単位から文化や言葉を含めたマルチな国
- 一社の文化からマルチ企業文化
これらの要素が新たなビジネス・ドライバーになり、市場で優位性を得る製品開発を行う、そして製品のライフサイクルを通じて効果的に進める方法の実装が求められている。
これらの課題だが実はPLMだけのものかと言うと、おそらくそうではなく、社内の代表的なアクティビテイであるERP、SCM、またCRMなどのいずれも製品にフォーカスしたイニシャチブと共に課題を共有するものである( 図2:製品に関するイニシャチャブとその関係)。またPLM戦略創りにはもちろん、PLM実装にあたっては、これらの複数のアクティビティの相互作用と全体最適を考えることが肝要である。それぞれが独自に、つまり新たな部分最適で進めることは得策でないだろう。それぞれのイニシャチブが革新プロジェクトと掲げながらも、実は『新たなレガシー』を作りあげることになりかねない。
PLMと言うターミノロジー(言葉とか単語)が出て早数年、皆さんはこの3文字を現実面でどう捉えているだろうか?また、どう受け止めているだろうか?PLMの前から存在したPDM(製品データマネージメント)は成功を見たのだろうか?また、今後、どう発展させたら良いのだろうか?また、日常活動の業務、上流の設計側から、下流の生産・製造側から、サービス側から,様々の立場でどのようにこのPLMと関わったらよいかについてはなかなか理解が難しいものがあると推測される。
そこでまずは企業の中の主要なライフサイクルを考えてみよう (図3:企業内の主要なライフサイクル )。様々は議論もあろうが大別して以下の3つのライフサイクル(およびプロセス)が明確に存在し、お互いに相互作用をしている:
- 製品定義:知的資産
- 製品:有形資産
- 運用支援:資源
第一のライフサイクルの知的資産は、上流として設計情報はもちろんであるが、製品がどのように設計されているか、製造されるか、どのように操作するのか、あるいはどのように使用されるのか、どのようにサービスされるのか、そして次に旧品になる際、廃棄され、どのように分解されるかの全体を含む。この情報は特定のビジネス部門だけではなく、サプライヤー、ビジネスパートナーおよび顧客をも含む企業間全体を横断して存在する。1980年前半には、企業は資産としてこれら知的財産である情報に注目し、価値付けをし、製品定義それ自身がビジネスへの重要な知的資産であることを今日認識しており、PLMはそのテーマの延長線上にある。
第二のライフサイクルである製品の生産は、デリバリー可能な製品へのフォーカスであり、典型的には自動車、玩具、電気製品、飛行機あるいはプラントなどのような物理的な有形資産である。このライフサイクルは製品の生産や流通に関連した活動すべてを含んでいる。ERPやSCMはどのように生産をし、製造をし、在庫を調整し、出荷を行うなどにフォーカスした製品の生産に関する重要なエンタープライズ・アプリケーションである。
第三のライフサイクルは運用支援である。これは企業の中核となる資源、つまり企業活動の支援に必要な人々、財源、様々な資源のマネージメントにフォーカスする。ERPなどまたはその他に包含されている場合が多い。
これらは製品ライフサイクル全体の関係について意味合いをもって理解することが重要であり、いずれの業種の企業に於いても、製品ライフサイクル全体は図3のように緊密に結び付けられた基本的な3つのプロセスで構成されている。それぞれのライフサイクルは、モノづくりに必要な人々、プロセス、情報、そしてビジネスシステムが存在する。
PLMが持つ意味合いの根底にあるものは知的資産(Intellectual Assets)の生成とマネージメントを行う製品定義ライフサイクルである。全製品ライフサイクルの最初のポイントは、顧客の要件並びに製品コンセプトでライフサイクルが始まり、製品が旧品になるまで、または保守サポートが中止されるまで続く。そこには機構系や電子コンポーネントからソフトウェアやドキュメンテーションまで全ての製品定義を含まれる。
ビジネスモデルの変化に伴い、かつての第二のライフサイクルのみを重視した企業経営ではもはや生き残れない。次回はその辺にフォーカスを置きたい。
(以上)
(注釈)
*.1:モノづくり
『モノづくり』は何時、誰が創った言葉(Terminology)か伺い知ることが難しい。しかし、多くの場面で引合に出され、使われている。筆者は次にように定義したい:
『モノづくりは日本の専門用語であり、それは顧客に於いて最高の利益を出すための価値を提供する商品を創り出すことを意味する。 モノづくりは単に二つの単語、すなわち「モノ」として製品)最終的に商品)と「づくり」として定義、生産(または製造)であるが、それはQCD課題に裏付けられた製品を定義し、計画、設計、生産&製造、保守をするコンセプトを表現する非常に意味深い言葉である。このコンセプトを達成するためのポイントは、経験に裏付けられたプロセスに基づいた革新的な製品(商品)を如何に創出するかである。