今回は一歩進めて実装課題に触れてみたい。まずPLMそのものの二つの大きな領域を思い出してもらいたい。それらは:
- アプリケーションツール:コンピューター支援機械設計(MCAD)、自動電子設計(EDA)、コンピューター支援ソフトウェア工学(CASE)、解析、テクニカルパブリッシング)
- コラボレーティブ製品定義マネージメント(cPDm):製品定義情報のコラボレーション、マネージメント、共有、利用&使用
実装課題を周辺の問合せから拾ってみると相変わらず聞かれるものに、『PDMとERPをどう統合するか』がある。ある意味でPDM黎明期の10年以上も前に存在した課題であるが、今では実装論と言ったレベルで展開されていると思われる。 ここでは後者のcPDmの中のこの課題を中心に述べる。
課題の焦点はおそらくそれぞれの領域が持っているBOMや製品構成管理やクラシフィケーションのマネージメントがオーバーラップしていることにある( 図14:オーバーラッピング )。この課題の解決は当該企業内の歴史的既得権益などと言ったいささかややこしい問題を含むものである。つまり古典的に生産側の職掌として品番を管理していたり、設計のアウトプットであった図面をベースに品質管理が行われるなど、昨今のビジネスモデルを満たすプロセスへの変革がなされてない場合である。これらを置き去りにすると、ひいては当該企業の市場での競争力を奪うものである。
筆者が関わったプロジェクトでは、これらの課題を解決することはなかなか容易ではなく、期単位、もしくはそれ以上の地道な努力が求められた。しかし、最終的に品番体系&管理を大きく改革したりしている。これは正にPLMの定義で述べたように、テクノロジーでなく、『ビジネス・アプローチ』であると言う事である。
一般論として、図15:業種により異なる(1) に図示するように、自社の製品&ビジネスのポジションについて設計中心なのか製造中心なのか、まだ製品の複雑性などで理解することが出来る。またこれらの要素には一品ものなのか、繰り返しなど、さらに昨今のように設計がグローバルなのかアウトソーシング、製造がグローバル展開なのかと言った複雑且つ多岐の要素も加味出来る。
この一般論をベースにオーバーラップ部分の解決の視点にPDMとERPの関係を見れば、 図16:業種により異なる(2) のような示唆を得ることが出来る。PDM側をマスターにERPをインテグレーション、逆にERP側をマスターにPDMをインテグレーション、またはPDMとERPで同期するなどに展開出来る。またはアイテムごとにマスターをどちらかにするなど様々である。実装に際しては、これらは教則本(ベスト・プラクティス)ではあるが、現実には当該企業のビジョンなど高いレベルからの落し込みが必須であり、『解』については千差万別であることを肝に銘じてもらいたい。
最近の話題ではあるが、本来ERP側で管理すべき情報であったが、それらをPDM側に移してしまったと言う例がある。この背景は、当該企業にとってのオーバーラッピングの部分が既存ERPのテンプレートにはめ込んだ場合、現場ユーザーの利用の容易性について、PDM側のアイテム管理の柔軟性(ユーザーインターフェイスを含む)が優れていたためである。要は現場で使えるシステムにするための投資が何であるかと言う単純明解な結論である。
以上にように、本題についての一般的な解はあるものの、それが正解であるかは別なレベルと考えるべきである。最終的に経営課題と言った観点から見なければならない。まとめとして次のようなポイントを上げておく:
- PDMを実装する際にERPなど社内イニシャチブとの整合の問題は避けて通れない
- そのために社内の異部門間の協調無しには進められない。
共に社の一つのゴールである売上&利益を考え、リスクも共有する
- PDMとERPを例にとれば、多くのオーバーラッピングがある。それらを首尾よく理解し、最適な『解』を得る
- 社内の歴史的背景にとらわれることなく、昨今&将来のビジネスの環境を踏まえること
- 当該企業の業種、そして規模を認識すること。投資効果から見て、実装は業種と企業規模に大きな差異あり
- 統合BOMがよく聞かれるがこれは物理的に唯一にすることではない。論理的に目的の情報に合意された統一的な識別子をもって到達できることを意味する
- アイテムのマスター&オーナー、そして関連するビジネスプロセスを明らかにし、最適を施す
- 『べき論』は最小に止め、自社は何で商売しているのかを考え、その方向性に沿って現実論で行く
最後にPLMとERM(次回に触れる予定、ERPを包含)の基本コンポーネントを典型的に実装したJet Propulsion Laboratory(米国カリフォルニア州パサデナ)アーキテクチャを例として示す( 図17:JPL - Collaborative Environment System Architecture)。
次回は最終回と今後の展開について述べる。
(以上)