約5年前PDMシステムは日本に新しい言葉として登場した。その後、ユーザーの問題意識の明確化、ベンダーの製品の日本化努力、国産PDMシステムの登場など着実に普及が進んでいる。市販ツールによる導入も300サイト近くに達しユーザ事例が公表されるようになった。ここでは米国のPDM専業コンサルタントCIMdata社によるPDM先進国の欧米の調査データ(1994年末)とともにPDMシステムの動向と私見を述べたい。
PDMユーザー・サーベイ
約10年前から欧米の多くの企業は製品の開発サイクルの短縮化、マーケットへ早期進出、品質の向上や製品原価の低減のためにPDMシステムを導入して来た。ここ数年、ユーザーやベンダーは早期ユーザーのPDM導入の経験から多くの点を学ぶことを課題としている。
初期のPDM利用は技術獲得のために企業内の部門単位や限られた人達でのパイロット・プロジェクトから出発したが、CIMdata社は3年ほど前からをパイロットからプロダクション・スケール・システムに移行し始めたと見ている。
CIMdata社は340に及ぶ調査項目についてPDMシステム導入後のプロダクション・フェーズに入り6ヵ月から2年以上を経過した企業を対象に進めた。回答のあった企業65社の業種は図-1の通りであり、企業規模は従業員1、000人以上、年売り上げU.S$250Million以上である。
PDMシステム導入時のPDM標準機能の評価
PDM業界に於けるPDMシステムの標準機能(*.1)のどれを重視しているかと言う点であるがボールト/文書管理、製品構造/構成管理、及びワークフロー/プロセス管理が非常に高いウエイトとなっている(図-2)。これはCAD/CAMシステムもこの種の機能は持っているものの、製品データとして当該アプリケーションから外の世界との情報共有化を進めようとした場合、PDMシステムの文書管理とデータ・ボールト(リポジトリー)機能が広範なデータの共有化とセキュリティ管理を実現するためである。
同様に製品構造/構成管理とワークフロー/プロセス管理はデータの整合性を実現するキーである。それは製品開発の複雑さと異なった部門間でのコンカレントな情報の共有化を進めるからである。
標準機能に加えて、PDMシステムのカスタマイズ性はユーザーにとってボールト/文書管理と同様は高いウエイトである(図-3)。これはユーザーのビジネスプロセスに合わせてユニークなシステムを構築すると言うユーザーからの非常に明快な答えである。
プログラム・インターフェイスやカスタマイズ・ツール/ユーティリティは標準機能の製品構造/構成管理と同等なレベルであり、これらは立ち上げ初期に於けるシステムをプロダクション・フェーズに持って行くためにその開発作業を容易にするキーである。
PDM導入効果
未だ時期は早いだろうがユーザーが得た明確な効果も同時にサーベイされている。図-5に示す様に、およそ半数以上の導入ユーザーがデータのアクセスの改善をあげており、続いて設変サイクルの短縮、設変時の誤りの減少、設変の回数の減少、などがおよそ3割程度、設変そのものコストの減少が2割強のユーザーから報告されている。今後これらの数字はプロダクション期間の増加で更に精度の高い数字が得られると期待する。これらは単なる紙上のビジョンではなく、結果として報告されている訳で導入時の指針に今後大きく寄与するだろう。
PDM動向
現在、PDM業界のトレンドはユーザーインターフェイスや部品表定義などのオブジェクト指向化で複雑な定義を優しく表現、ボールトそのもののSTEP対応の検討やインポート/エキスポートにSTEPのインターフェイスを設ける、PDMシステムが持つ製品構成などをCAD/CAMやMRPシステムと統合化する際の手法、多種図面/図書をより効果的(速く、見やすく)に処理するビューワ機能、新たなユーザーインターフェイスの切り口としてのインターネットの利用などがあげられる。これら一部の先行ベンダーは製品を提供するに及んでいる。
以上、ユーザー・サーベイと動向を述べたが本書ではPDMとは何かと定義に関して敢えて言及しなかったが、製造業の現場で地道且つ確実にPDMシステムの利用が進められていることを理解していただいた思う。
現在、世界に60種以上のPDMシステムが流通している。この多さの理由はPDMシステムは単なる生産性向上ツールではなく、様々な企業の多岐に渡るビジネスプロセスに入り込んで構築されるためである。今後も用途や業種に最適なものが選択されるのでこの状況は続くものと思われる。
昨今、PDMシステムが名前たけが一人歩きしている嫌いもある。PDMシステムはカタログから利用や効果に関して判断することは非常に難しい。これは数年前、 PDMシステム普及期の欧米でも見られた現象でもある。昨年は日本でも冒頭のように先駆者のユーザーからの報告も公開されるに至っており、今年は一層のパイロットやプロダクションに進むことになろう。
(*.1)CIMdata社が定義したデータ・ボールト/文書管理(Data Vault/Document Mgt.)、製品構成/構成管理(Product Structure/Configuration Mgt.)、ワークフロー/プロセス管理(Workflow/Process Mgt.)、データ/パーツ・クラシフィケーション(Data/Part Classification)、プログラム管理(Program Mgt.)のユーザー機能、イメージ・サービス(Image Service)、データ変換(Data Translation)、データ転送(Data Transfer)、通信/通知(Communication/Notification)、アドミニ(Administration)のユーティリティ機能が業界標準となっている。
(*.2)重要度であるが指標は1.00は非常に重要、0.75は重要、0.50は平均的、0.25はそれほど重要でない、0.00は重要でないである。