2022.4.14:AIを利用した大腸内視鏡画像診断ソフトウェアの国際共同研究結果が医学誌『NEJM Evidence』に掲載 (Cybernet)


「EndoBRAIN」の有用性が、国際多施設共同研究にて実証されました。

サイバネットシステム株式会社(本社:東京都、代表取締役 社長執行役員:安江 令子、以下「サイバネット」)は、AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN®(エンドブレイン)」の有用性に関する国際多施設共同研究の結果が、世界五大医学誌の中でも最も歴史のある医学雑誌『New England Journal of Medicine(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)』※1の姉妹紙で、主に臨床にフォーカスしたオンライン月刊誌『NEJM Evidence(エヌイージェイエム・エビデンス)』に掲載されたことをお知らせいたします。

EndoBRAINとは

EndoBRAINは、昭和大学横浜市北部病院消化器センターの工藤進英教授、名古屋大学大学院情報学研究科の森健策教授らのグループと共同でサイバネットが開発したソフトウェア群です。事前に膨大な症例画像を学習した人工知能(AI)が、オリンパス株式会社製大腸内視鏡で撮影された内視鏡画像情報を基に、医師による病変の診断予測を補助します。 

2018年12月、AIを搭載した内視鏡画像診断支援機器として国内で初めて医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)※2に基づいたクラスⅢ・高度管理医療機器(承認番号:23000BZX00372000)※3として承認を取得しています。

『NEJM Evidence』に掲載されたEndoBRAINの国際共同研究成果について

  • 論文名:
    “Real-Time Artificial Intelligence-Based Optical Diagnosis of Neoplastic Polyps during Colonoscopy”
    (参考訳:「リアルタイムAIシステムによる大腸腫瘍の診断」)
  • 『NEJM Evidence』論文掲載Webサイト:
    https://evidence.nejm.org/doi/full/10.1056/EVIDoa2200003

背景

大腸がんは日本人女性のがん死亡数の1位、男性でも3位と増加傾向で、効果的な対策が求められるがんです。その対策として、大腸内視鏡で早期がんや前がん病変である腫瘍性ポリープを切除することで、大腸がんによる死亡を大幅(53-68%)に減らせることが知られています(Zauberら New England Journal of Medicine 2012, Nishihara et al. New England Journal of Medicine 2014)。しかし、大腸ポリープの中には切除する必要のない非腫瘍性ポリープもあるため、大腸内視鏡検査中に切除すべき病変か、経過観察してよい病変かをリアルタイムで見分ける必要があります。

サイバネットは、このような内視鏡診断をサポートする人工知能(AI)ソフト「EndoBRAIN」を昭和大学横浜市北部病院消化器センター(臨床研究、アノテーション作業を担当)および名古屋大学大学院情報学研究科の森健策研究室(AIエンジン開発を担当)と連携して開発してきました。

研究の内容

この国際共同研究は、昭和大学横浜市北部病院消化器センター、オスロ大学(ノルウェー)、キングス・カレッジ(ケンブリッジ大学の関連病院・イギリス)により、2019年5月~2021年5月の間に、EndoBRAINの実臨床での有用性を検証するために行われました。研究に参加した内視鏡医は、専門医ではない一般的な診断力を持つ医師に限定し、1289名の被験者に同意の上でEndoBRAINを使用した内視鏡検査が実施されました。この研究で発見された計892の病変のうち359個が腫瘍性ポリープでした。

研究成果と意義

EndoBRAINを使用することによって内視鏡医の腫瘍診断における特異度※4(非腫瘍を非腫瘍であると識別する精度)は83.1%から85.9%に上昇しました。また医師が自信をもって診断できる病変数の割合はEndoBRAINを使用することによって74.2%から92.6%と大幅に向上しました。なお、主要評価項目である感度※4については統計学上有意な差は認められませんでした。

これらの結果から、内視鏡医がEndoBRAINを使用することで、治療が不要な非腫瘍を高い確信度で識別することが可能となりうることがわかりました。不要なポリープの治療数を減らすことで、医師と患者双方の負担を大きく軽減させ、係る医療費削減に結びつくことが期待されます。

本研究への支援

本研究は、文部科学省科学研究費・ノルウェー科学研究費・ノルウェー癌協会研究費の支援を受けて実施されました。

サイバネットは最新のAIを活用した内視鏡技術で、内視鏡検査に携わる医療従事者の負担軽減に一層寄与できるよう、今後も製品開発・改良に注力してまいります。

EndoBRAINシリーズの詳細については、下記Web サイトをご覧ください。
https://www.cybernet.co.jp/medical-imaging/products/endobrain/

注釈

※1: 『New England Journal of Medicine』:Massachusetts Medical Society(マサチューセッツ内科外科学会)が発行する、世界でもっとも権威ある査読性の週刊総合医学雑誌の一つ。200年以上にわたる歴史を有し、掲載論文の引用回数は、世界医学雑誌の中で第一位(学術誌の評価を行うJournal Citation Reportsの2021年版による)。
https://www.nejm.org/
※2: 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法):薬機法ともよばれる法律で、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器および再生医療等製品の品質、有効性および安全性を確保し、医療機器の安全対策強化や、医薬品・医療機器・再生医療等製品などの承認・規制を目的とするもの。この法律では診断・治療を目的としたソフトウェアも対象となる。
※3: 医療機器は多種多様であるため、患者に与えるリスクに応じて、一般医療機器(クラスⅠ)、管理医療機器(クラスⅡ)、ならびに高度管理医療機器(クラスⅢとクラスⅣ)に分類されている。クラスⅡ・管理医療機器は不具合が生じた場合でも、人体へのリスクが比較的低いと考えられるもので、レントゲン撮影装置や心電計、注射針、EndoBRAINのような一部の診断支援プログラムが該当する。
※4: 「感度」・「特異度」:感度とは画像中に病変があるときにAIが正しく病変があると判定できる確率であり、特異度とは画像中に病変がないときにAIが正しく病変がないと判定する確率である。つまり感度が高ければ高いほどAIによる見落としが減り、特異度が高ければ高いほど誤検出が減ることを意味する。

サイバネットについて

サイバネットシステム株式会社は、CAE※のリーディングカンパニーとして30年以上にわたり製造業の研究開発・設計関係部門、大学・政府の研究機関等へソフトウェア、教育サービス、技術サポート、コンサルティングを提供しています。また、IT分野では、サイバー攻撃から情報資産を守るエンドポイントセキュリティやクラウドセキュリティなどのITセキュリティソリューションを提供しています。近年では、IoTやデジタルツイン、ビッグデータ分析、AI領域で、当社の得意とするCAEやAR/VR技術と組み合わせたソリューションを提案しています。

企業ビジョンは、「技術とアイデアで、社会にサステナビリティとサプライズを」。日々多様化・複雑化する技術課題に向き合うお客様の課題を、期待を超える技術とアイデアで解決し、更にその先の変革へと導くことを目標に取り組んでまいります。

サイバネットシステム株式会社に関する詳しい情報については、下記Webサイトをご覧ください。 
https://www.cybernet.co.jp/

※ CAE(Computer Aided Engineering):ものづくりの研究・開発工程において、従来行われていた試作品によるテストや実験をコンピュータ上でシミュレーションし分析する技術。試作や実験の回数を劇的に減らすことで、開発期間や資材コストを大幅に削減できるメリットがある。

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本件の参照先:https://www.cybernet.jp/company/about/news/press/2022/20220414.html

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